副業と個人事業主の違いは?会社員が副業で個人事業主になるメリット・デメリットも解説!

「会社員でも副業で個人事業主になれる?」

「会社員が副業で個人事業主になるメリット・デメリットは?」

「そもそも副業と個人事業主の違いってなに?」

上記のような疑問や悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。本記事では、副業と個人事業主の違いや、会社員が副業で個人事業主になるメリット・デメリット、個人事業主になる方法などを解説しています。

本記事を読むことで副業と個人事業主について理解できるようになり、同時に個人事業主のなり方も把握できることでしょう。ぜひとも参考にしていただけたら幸いです。

副業と個人事業主の違い

副業と個人事業主の違いは下記の通りです。

  • 副業=本業以外の仕事を指す言葉。つまり、本業がある上での別の仕事が副業となる。
  • 個人事業主=法人に属さない上に法人の設立もせず、自らの能力やスキルで継続的に収入を得ている人を指す言葉。つまり、自らのビジネスを本業として行っている。

なお、副業であったとしても、個人事業主になることは可能です。しかし、副業がアルバイトやパートの場合は個人事業主になれません。個人事業主になるには個人で事業をしている必要があるからです。

例えば、フリーランスで業務委託契約を結んで収入を得ている人やアフィリエイトをしている人などは、個人事業主に該当します。個人事業主になる方法については後述で解説しています。

「事業所得」と「雑所得」の違い

事業所得と雑所得の主な違いは、生計を立てられるほどの規模かどうかです。国税庁によると、事業所得とは下記のことを指します。

引用元:No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)|国税庁 (nta.go.jp)

簡単に説明すると、自分で事業を営んでおり、生計を立てられるほどの規模、かつ反復・継続・独立して行われるものが事業所得に該当します。一方で雑所得は下記の通りです。

引用元:No.1500 雑所得|国税庁 (nta.go.jp)

副業など片手間にする業務は雑所得に該当します。つまり、ほとんどの副業は雑所得に当てはまるのが実情です。

しかし、会社員の副業であっても、税務署に事業所得として認められるケースもあります。個人事業主として活動していたり、一定の規模かつ労力を割いていたりしていれば、事業所得として認められやすくなるでしょう。

結局のところ、事業所得か雑所得かは税務署の判断で決まります。なお、事業所得として副業をする場合、原則開業届を提出して個人事業主になる必要があります。

個人事業主かつ事業所得で確定申告することで、下記のようなメリットを得られるでしょう。

事業所得で確定申告する場合の主なメリット

  • 青色申告ができるようになる
  • 本業の収入と損益通算できるようになる
  • 副業の赤字分を最大3年間繰り越せる

上記のメリットについては、後述で詳しく解説しています。

副業で個人事業主になった際は確定申告が必要?

個人事業主かどうかにかかわらず、副業の場合は「1年間(1/1~12/31)の所得が20万円以下」だと確定申告が不要です。注意点として、所得とは収入のことではありません。「収入―経費=所得」となります。

例えば、収入が30万円であったとしても、経費が20万円だと所得は10万円になるので確定申告する必要がありません。

ただし、副業が赤字かつ事業所得で計算しているケースでは、確定申告をすると逆に得をすることも。詳しくは、後述のメリットで解説しています。

確定申告が不要でも「住民税の申告」は行う必要がある

気を付けたいのは、確定申告が不要だとしても「住民税の申告」は行う必要があるということです。

確定申告は、所得に対する所得税を確定させるために行う申告なので、一定の所得以下であれば確定申告する必要はありません。

ただし、住民税は所得に応じて計算されるため、副業の所得が20万円以下でも申告しなければなりません。
所得税と住民税の算出方法は異なるので留意しておきましょう。

個人事業主になるには開業届が必要

個人事業主になるには、自分が住んでいる所轄の税務署に開業届を提出する必要があります。

開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)の用紙は税務署に用意されている他、国税庁のホームページからダウンロードも可能です。なお、開業届は原則、事業を始めて1ヶ月以内に提出しなければなりません。

引用元:個人で事業を始めたとき/法人を設立したとき|国税庁 (nta.go.jp)

ただし、1ヶ月以上後に提出しても特に罰則はなく、問題なく受け付けてくれます。

また、青色申告を選択する際は「所得税の青色申告承認申請書」も一緒に提出しておきましょう。同年の申告分から青色申告特別控除の適用を受けたい場合、その年の3月15日までに提出する必要があります。

なお、1月16日以降に開業した場合、事業開始日から2か月以内に提出することで、同年の申告分から青色申告特別控除の適用を受けられます。

引用元:[手続名]所得税の青色申告承認申請手続|国税庁 (nta.go.jp)

副業禁止の会社で副業をしてもバレない?

副業禁止の会社で副業をした場合、もちろんバレるリスクはあります。会社に副業がバレる可能性が一番高いのが住民税です。

多くの会社は給与から天引きする形(特別徴収)で住民税を納付するため、事前に会社は役所へ従業員の給料を知らせ、役所が給料をもとに計算して住民税を会社へ報告します。

副業をしていた場合、本業分+副業分を合算した住民税が会社に通知されます。つまり、会社の担当者は住民税の金額を見て「給料に対して住民税が高すぎないか?」と気づくわけです。

本業の会社に副業がバレないようにする方法

本業に副業がバレたくない方は、副業分の住民税の徴収方法を“普通徴収(自分で納付)”にするとバレません。

副業分を自分で納付すれば、本業分の住民税の通知だけが会社にいき、副業分は自分だけに通知がくるので会社にバレないです。

引用元:手順6 住民税に関する事項を記入する|国税庁 (nta.go.jp)

市役所で住民税の申告をする際、申告書の欄に「給与から差し引き・自分で納付」のどちらかを選べる欄があるので、自分で納付にチェックを入れておきましょう。

会社員が副業で個人事業主になる5つのメリット

会社員が副業で個人事業主になるメリットは下記の5つです。

  1. 青色申告で大きな節税効果を期待できる
  2. 事業に係る経費を計上できる
  3. 副業の赤字分を繰り越せたり本業の所得と損益通算できたりする
  4. 責任感をもって副業に取り組めるようになる
  5. 低いリスクで手軽に開業できる

1つずつ見ていきましょう。

1.青色申告で大きな節税効果を期待できる

個人事業主になると、確定申告で青色申告できるようになります。青色申告特別控除では「10万円・55万円・65万円」のうち、いずれかの所得控除を利用できます。

所得控除を受ける条件は下記の通りです。

青色申告特別控除が適用される条件

控除金額控除を受ける条件
10万円簡易簿記で記帳する(収支のみで帳簿を作成する)
55万円複式簿記で記帳する(正規の簿記をもとに勘定科目を用いて帳簿を作成する)
65万円複式簿記+電子帳簿保存またはe-Taxでの電子申告を行う

参照元:No.2072 青色申告特別控除|国税庁 (nta.go.jp)

また、青色申告特別控除を受けるには、事前に「所得税の青色申告承認申請書」の提出が必須です。提出していない場合は青色申告ができませんので注意しましょう。

2.事業に係る経費を計上できる

個人事業主になることで、事業に係る経費を広く計上できるようになります。経費を多く計上することで、高い節税効果が期待できるでしょう。

副業のためにかかった費用(売上のために使った費用)を全て経費とすることで、その分の所得が減ります。つまり、納める所得税の金額を減らせるのです。また、所得が20万以下になれば、確定申告自体が不要です。

3.副業の赤字分を繰り越せたり本業の所得と損益通算できたりする

個人事業主の場合、副業の赤字分を繰り越したり、本業の所得と損益通算したりすることが可能となります。例えば、副業が赤字になったとしても、本業の給与や賞与と相殺できます。

つまり、本業の所得から副業の赤字分を差し引いて計算するため、所得税や住民税の節税につながります。すでに支払った税金が還付されることもあるでしょう。

また、副業の赤字分を最大3年間繰り越すことも可能です。赤字を繰り越した場合、翌年以降の黒字分と相殺でき、その分の所得税を抑えられます。

なお、赤字分の繰り越しや損益通算を行うには「所得税の青色申告承認申請書」を提出している、かつ事業所得として確定申告しないと適用されません。

4.責任感をもって副業に取り組めるようになる

個人事業主として開業届を提出すると、責任感や覚悟をもって副業に取り組みやすくなります。副業を始める際は意気込んでいたのに、実際に始めてみると長く続かない人も多いです。

開業届を提出するということは、それだけ本気で副業に取り組むということです。責任感や覚悟を持つだけで、継続して続けやすくなるでしょう。

5.低いリスクで手軽に開業できる

会社員をしながら個人事業主になる場合、低いリスクで手軽に開業できるのもメリットです。会社を退職して個人事業主1本で開業した場合、失敗した際のリスクが高いです。

しかし会社員をしながら個人事業主として独立することにより、大きくリスクを軽減できます。仮に副業が失敗したとしても、会社員としての安定した収入は得られ続けるからです。

また、副業が軌道に乗ってから独立することもできます。会社員という保険があるからこそ、失敗を恐れず副業に取り組みやすくなるでしょう。

会社員が副業で個人事業主になる3つのデメリット

会社員が副業で個人事業主になるデメリットは下記の3つです。

  1. 青色申告特別控除を受ける場合は処理が煩雑になる
  2. 失業手当が受けられなくなる
  3. 自由に過ごせる時間が減る

1.青色申告特別控除を受ける場合は処理が煩雑になる

青色申告特別控除は「最大65万円」の控除が受けられるので魅力的ですが、そのぶん経理処理が煩雑になります。複式簿記はひとつひとつの費用や収益に対し、勘定科目を使って計上しなければなりません。

また、借方や貸方といった概念もあり、一定の簿記の知識が求められます。利益を生まない経理事務に時間を割きたくない人にとっては、デメリットと言えるでしょう。

経理事務が面倒だったり負担が大きかったりする場合は、税理士へ依頼することも可能です。しかし、税理士への依頼は年間で数万円以上の費用がかかるので慎重に考えましょう。

2.失業手当が受けられなくなる

会社員をしながら個人事業主になった場合、失業手当を受けられなくなります。失業手当とは、本業の仕事を失ったとき、次の仕事が見つかるまで一定期間の生活を保障した制度です。

しかし、開業届を提出して個人事業主として活動しているならば、職が無い状態とは言えません。よって個人事業主としての収入が無かったとしても、失業手当は受けられません。

仮に失業保険を受給したいのであれば、廃業届を所轄の税務署に提出する必要があります。

3.自由に過ごせる時間が減る

会社員をしながら個人事業主として副業をする場合、自由に過ごせる時間はどうしても減ってしまいます。
本業と副業の業務量を上手くコントロールできない場合、心身に不調をきたしてしまう可能性もあるでしょう。

副業のせいで本業に影響が出てしまっては本末転倒です。本業と副業を上手く両立させるには、スケジュールをきちんと立て、業務量を調整するスキルが必要不可欠です。

また、体調を良好な状態に保つためにも、自由な時間は必ず確保しておくようにしましょう。仕事漬けの毎日だと、いつ体を壊してもおかしくありません。

まとめ

本記事では、副業と個人事業主の違いや個人事業主のメリット・デメリット、個人事業主になる方法などを解説しました。

会社員でも副業をしながら個人事業主になれます。将来的に起業や独立を考えているのであれば、副業で個人事業主として稼ぎながら目指していくのが得策でしょう。

会社員で個人事業主になる場合、メリット・デメリット両方を理解した上で開業届を提出しましょう。また、会社で副業が禁止されている場合、副業可能な会社に転職するのも選択肢として挙げられます。

さまざまな選択肢を検討しながら、自分に合った方法で個人事業主になりましょう。